2002年の幕が開きました。2000年ミレニアム、200121世紀の幕開けの年、お祭り騒ぎの年が過ぎて、今年は少しは落ち着きを取り戻すのでしょうか。今年は安定した年になりますように祈ります。

能には天下泰平・国土安穏を祈願する芸として「翁(おきな)」という演目があります。特に筋書きはなく、神体としての翁面を掛け、ことほぎの謡と舞を演じます。

「どうどうたらりたらりら、たらりららりららりどう。ちりやたらりたらりら、たらりららりららりどう。ところ千代までおはしませ、吾等も千秋さむらわう。鶴と亀との齢にて、幸い心に任せたり。どうどうたらりたらりら、たらりららりららりどう。」

このような謡いだしに続いて、千歳(露払い)の舞、翁舞それから三番叟(さんばそう)と続きます。

正月、各地の能楽堂で一年の無事の祈願のために翁が上演されます。能のもっとも古い姿であり、もっとも神聖視される演目ですので、演者も精進潔斎してそれに臨みます。

新春の心が新鮮な時、一種透明で緊張した空気の中に身を浸していただけたらと思い、「翁」を上演する舞台のご案内をいたします。


13日  大槻自主公演新春公演 14時 大槻能楽堂(大阪)

14日  同上

15日  志芸の会       14時 大阪能楽会館

16日  山本定期能      14時 山本能楽堂(大阪)

 〃    観世会        11時 観世能楽堂(東京)

 〃    喜多流自主公演    12時 喜多能楽堂(東京)

112日  開館3周年記念新春能 14時 豊田市能楽堂(愛知)

113日  京都観世会      10時半 京都観世会館

114日  金沢定期能      13時 石川県立能楽堂

〃    銕仙会        13時 宝生能楽堂(東京)

     梅若研能会      13時 観世能楽堂(東京)

1月20日  梅         11時 大阪能楽会館

  〃   研究会別       11時半 観世能楽堂(東京)

  〃   梅若会        12時 梅若学院能楽堂(東京)


私も112日豊田市能楽堂の「翁」で後見を勤めます。この時の「翁」は、「十二月(じゅうにつき)往来」という演出でいたします。毎年5月に行われる奈良興福寺薪能で上演されている形です。常の1人の翁に対して、この場合は3人の翁で演じます。後見というのは演者の世話役という黒子的な役割ですが、演者が急に出演に支障をきたしたような場合、代わりに役を勤めなければならない状況もでてきますので、気を抜いてはいられません。去年12月春日若宮祭後宴能で、シテの体調が思わしくなく、後見についていた私が代役するということが現におこりました。もしもということを常に考えておくことが後見の仕事でもあります。

21日、故郷庄内では、黒川の村で王祇祭が執り行われ全国的に有名になっている黒川能の「翁」が奉納されます。旧正月の神事、雪に降り込められた村全体を舞台にした「翁」を一度拝見したいと思いながらまだその機会を作れずにいます。


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佐藤俊之(昭和54年卒 早稲田大学で能のクラブ「金春会」に入部をきっかけにして本田光洋師、吉場廣明師に師事。能面師・橋岡一路師の薫陶を受け、卒業後、奈良在住の金春晃實師のもとに住み込み内弟子として修行する。平成6年に独立し、現在京都府相楽郡木津町在住。)



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佐藤 俊之  (昭和54年卒)

2002年